消化器内科

ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は胃の粘膜に感染し、生涯にわたり慢性の活動的な胃炎が誘発され、長期間が経過すると胃の粘膜が萎縮(小さくなり機能が低下すること)した萎縮性胃炎、さらに腸上皮化生(組織の形態が変化することで胃の粘膜が腸の上皮で置き換わってしまう)へと進行します。

萎縮性胃炎、腸上皮化生を背景にして胃がんが発生してきてしまいます。
又ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍・リンパ腫(リンパ節などから発生する腫瘍)・胃ポリープなどの消化管の病気のみならず特発性血小板減少性紫斑病・貧血などとの関連も指摘されています。

2009年1月に日本ヘリコバクター学会からヘリコバクター・ピロリ感染の診断と治療ガイドラインが発表され、除菌治療(ピロリ菌を消すこと)を行うことにより胃炎が改善され、潰瘍や癌などのピロリ菌感染に伴い発生する病気の予防が期待される様になりました。

このような背景の中、胃がんの発生予防のため2013年2月ピロリ菌の除菌治療が自由診療ではなく保険治療で行うことができる様になりました。ただし保険治療で行うには胃カメラで胃炎の状態であることの診断が必要で、胃カメラの際には胃がんの除外の他、ピロリ菌の感染の有無を診断し、その胃カメラの所見から胃がんの発生リスクを評価し、その後の対応を検討することが重要です。

ピロリ菌感染の胃カメラの主な所見として萎縮・腸上皮化生の他にびまん性発赤・胃のひだのハレ・粘液の存在・鳥肌といったものがあり、萎縮・腸上皮化生・ひだのハレ・鳥肌は胃がんの発生リスクとして重要で、当院では内視鏡専門医が正確に診断し、ピロリ菌の除菌治療などで胃がんの発生予防へと導きます。

粘膜萎縮とびまん性発赤あり
粘膜萎縮とびまん性発赤あり
粘液付着とひだ腫大
粘液付着とひだ腫大
鳥肌状粘膜
鳥肌状粘膜

ピロリの除菌治療には胃内のPH(酸性、アルカリ性)濃度が重要で、PH>5とすることが推奨されています。 従来のピロリ菌の除菌成功率は1回目の治療で7割程度、2回目の治療で9割程度でしたが、当院では通院回数を少なくするために、従来の薬より24時間にわたりPH>5とする作用が持続するボノプラザンという薬を併用し(もちろん保険適応です)1回目から成功率を90%以上(1回目が92%で、2回目が98%の成功率)とすることをおすすめしています。

ヘリコバクター・ピロリ除菌後胃がん
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療によってそれ以降に発生する胃がんが少なくなると報告されていますが、除菌を行った後でも数年経ってから胃がんが発生することもあるので注意が必要です。

除菌後の胃がんは男性に多く、除菌前に胃体部に萎縮性胃炎があり、できる胃がんは腫瘍径が小さく潰瘍を伴わない凹んだ形が多いとされています。当院では除菌後も定期的(1年に1回程度)に胃カメラをうけることをおすすめしています。
ヘリコバクター・ピロリ陰性胃がん
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していなくても胃がんが発生することがあり、全胃がんの1%程度と比較的稀ながんですが、要因として生活習慣(塩分・喫煙・高血糖・低コレステロール血症)、EBウィルス感染症、遺伝子異常、自己免疫性胃炎が考慮されます。
特徴としては60歳未満に多く、男女で性差はなく悪性度が高い型が優位で、明らかにヘリコバクター・ピロリ菌感染した胃から発生する胃がんと特徴が異なっています。
検査方法
尿素呼気試験・便中H.pylori抗原検査・血中・尿中抗H.pylori IgG抗体検査・内視鏡検査

よく見られる消化器の疾患