消化器内科

食道がん

「食道がん」は世界中では8番目に多いがんで、男性に多く、地域的には東アジア・東アフリカに多いとされています。
組織学的には扁平上皮がんと腺がんが2大組織型で、日本の食道がんの90%以上は扁平上皮がんです。

食道の扁平上皮がんの発がん物質は喫煙とアルコール飲料に関連するアセトアルデヒドという物質が原因だとわかっています。肝臓にはこのアセトアルデヒドを代謝する酵素がありますが、日本人の約半数がこの酵素をうまく使えず、飲酒をした時に顔が赤くなったり、脈が早くなったりする人は体内にアセトアルデヒドが蓄積し、食道扁平上皮がんのリスクが高まります。

ですから50歳以上の男性、飲酒者のなかで顔が赤くなったり脈が早くなったりする人、喫煙者は積極的に胃カメラをうけられることをおすすめします。

当院で採用している狭帯域内視鏡(NBI)は、刺激を与えずに高い精度で小さな早期の食道がんの発見に有用です。

実際の食道の観察の仕方として、NBIと拡大観察を用いて上皮乳頭内ループ状毛細血管(IPCL)を観察します(図1)。この血管の様子で拡張・蛇行・口径不同・形状不均一があればがんと診断します。口径不同とは1本1本の血管の中で細くなったり、太くなったりすることやいくつかのグループの血管を比べて口径が違うことをいいます。形状不均一とはまわりの血管と比べて一つ一つの形が違うことで判断します。

図1)日本食道学会拡大内視鏡分類 TypeA・B血管

Type A
血管形態の変化がないか
軽度なもの(Type A)
Type B1
血管形態の変化が高度なもの
(Type B1)

※小山 消化器内視鏡2012 胃と腸2014

そしてがんの深さはこの血管がループを描くか描かないかといったことで診断します。また食道学会分類ではこの血管に加えて病変内の血管がまばらな部分(AVA)でがんの深さを判断し、具体的には0.5mm未満ではsmall、0.5~3.0mmではmiddle、3.0mm以上ではlargeとなり、内視鏡的治療の方針に役立てます。

食道がんは早期発見が重要で、がんの深さが粘膜固有層(図2)までであればリンパ節転移の頻度が少ないため、内視鏡治療であるEMRやESDで完治が可能です。

図2)食道表在癌の深達度亜分類とその特徴

食道表在癌の深達度亜分類とその特徴

※食道癌診断治療ガイドライン2012年版

主な症状
飲み込んだ時に胸がしみる、やける感覚・食べ物がつかえる・胸の奥、背中の痛み・咳、たん・声枯れ など
検査方法
X線検査・内視鏡検査・CT検査・MRI検査・超音波検査・PET検査・腫瘍マーカー(血液検査)

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