消化器内科

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸の表面の粘膜とその下の層である粘膜下層を主体とした原因不明の慢性炎症性疾患で、根治的な治療は確立されていません。
治療目標はできるだけ長期間寛解(病気の症状が軽減もしくはみかけ上消失した状態)を継続することです。

潰瘍性大腸炎の活動性の評価は症状(排便回数、血便、発熱、脈の早さ、貧血など)を中心に点数化され、活動性が高い場合には寛解へと導く治療を、寛解の状態となれば良好な状態を継続する治療が行われてきました。

しかし最近では症状が寛解になっても39~60%の患者さんでは大腸カメラを行ってみると活動的な病変がみられ、こういった患者さんでは長期間の寛解を得ることが難しいことがわかってきました。

そこで大腸カメラの所見で炎症(生体が何らかの有害な刺激をうけた時に免疫反応が働き、それによって生体に起きる症候)所見がみられない状態、いわゆる粘膜治癒を治療目標とする考え方が提唱されるようになってきました。

粘膜治癒の判定については大腸カメラの肉眼(顕微鏡などを使わない見たそのもの)所見の改善が最低条件で、そこに大腸カメラの際に採取した組織を顕微鏡で見た所見を加えるかは議論のわかれているのが現状です。

また、潰瘍性大腸炎は大腸がんのリスク要因で、活動性が高いほど大腸がんの発生率が高くなることが知られています。潰瘍性大腸炎を背景として発生する大腸がんは通常の大腸がんと性質が異なり、潰瘍浸潤型やびまん性浸潤型が多く、悪性度が高いと言われています。色素散布(インジゴカルミンなど)法を用いるターゲット生検が有用です。

こういったことを踏まえると、長期間の寛解を継続するための評価や大腸がんの発見には大腸カメラが必要とされます。

  • 正常
    血管が透けて見える
    出血なし

    正常な状態

  • 軽度
    血管が透けて見えない
    粘膜が赤くなっているが軽度
    粘膜が細かい顆粒状になっている

    軽度な状態

  • 中等度
    出血
    びらん
    粘膜が赤くなっている
    膿性粘液の付着

    中等度な状態

  • 重度
    潰瘍
    自然出血著明

    重度な状態

潰瘍性大腸炎において、内視鏡検査によって診断される粘膜治癒の有無が、その後の臨床経過と関連することが報告されています。すなわち粘膜治癒が達成された患者さんは、再燃(治まっていた病状や症状が再び悪化すること)の危険性や手術の必要性も低下して生活の質が向上しますが、一方、粘膜治癒がみられない患者さんでは、症状が寛解状態(病気の症状が軽減もしくはみかけ上消失した状態)であっても、再燃や手術の危険性が高くなるとされています。したがって、大腸カメラを行なって大腸の粘膜所見を評価し、再燃や手術の危険性が高い患者さんでは早い段階で薬剤治療を強化することで治療成績が向上する可能性があります。

潰瘍性大腸炎は基本的には大腸の病気ですが、胃や十二指腸に炎症が出現することもあり、胃カメラを行うことも重要です。

潰瘍性大腸炎と区別が必要な病気としてクローン病、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、抗生剤起因性出血性腸炎、放射線照射性大腸炎、アミロイドーシス、好酸球性胃腸炎、憩室性大腸炎、腸結核、エルシニア腸炎、腸間膜脂肪織炎、NSAIDs起因性腸炎、アメーバ性腸炎、サイトメガロウイルス腸炎、腸管ベーチェット、虚血性腸炎、リンパ濾胞過形成,Collagenous colitisといったものが考えられます。

主な症状
血便・粘血便・下痢・腹痛
検査方法
問診・血液検査・便潜血検査・大腸内視鏡検査

よく見られる消化器の疾患